若鶴酒造・三郎丸蒸留所が送り出すハイボール缶シリーズの中でも、「スモーキーハイボール スパニッシュオークフィニッシュ」は、その名の通りヘビーピーテッド原酒とスパニッシュオーク樽で追熟された原酒という二つの個性を極限まで追求した一本です。通常の「三郎丸蒸留所 ハイボール」缶と比較して、ピート香の深さ、味わいの濃密さ、そして樽由来の複雑な風味が格段に増しており、ウイスキー愛好家も唸るような本格的なハイボール体験を提供します。
背景と個性：原酒の「濃さ」に特化した特別な追熟（フィニッシュ）
三郎丸蒸留所は、北陸で唯一のウイスキー蒸留所として、昔ながらの製法と革新的な設備（鋳物製ポットスチル「ZEMON」）を組み合わせています。
- ノーマル缶との違い：ノーマル缶は、三郎丸蒸留所のクリアでバランスの取れた個性を表現しているのに対し、本製品は、力強いスモーキーさを持つ原酒に、スパニッシュオーク樽由来の濃厚な樽感と複雑さを上乗せすることで、全く異なるアプローチで「飲むウイスキーの個性」を強調しています。
- スパニッシュオークの影響：スパニッシュオーク樽で短期間追熟させることで、ウイスキーにナッツやカカオのような香ばしい風味と、木のスパイス、そしてほのかな甘みが付与され、スモーキーな骨格に深みと複雑さを加えています。
感覚分析：ヘビーピートと濃厚な樽香の融合
色（Color）：より深い琥珀色
ノーマル缶と比較すると、明らかに濃い琥珀色をしています。これはスパニッシュオーク樽由来の色合いであり、味わいの濃密さを視覚的にも示しています。
香り（Aroma）：穏やかな焚き火と芳醇な樽のニュアンス
ノーズでは、まずノーマル缶よりも一段と重厚で明確なピートスモーク（焚き火や燻製肉のニュアンス）が感じられます。そのスモークの奥から、ナッツ、香ばしいカカオ、そして木のスパイスのような濃厚な樽由来の香りが追いかけてきます。ほのかなドライフルーツの甘みも感じられますが、全体としてはノーマル缶の軽快さに比べ、深みと重厚なレイヤーがあります。
味わい（Taste）：スモーキーな力強さとビターな樽のコク
口に含むと、力強いスモークフレーバーが炭酸と共に広がり、濃厚でオイリーな舌触りが感じられます。ノーマル缶が持つ爽快感とキレは保ちつつ、こちらはビターチョコレート、炒ったナッツ、そして木を思わせるドライなスパイスがしっかりと主張し、ボディが強いです。ハイボールでありながら、力強い樽のコクと微かな甘みがあり、飲みごたえがあります。
余韻（Finish）：長く続くスモークとタンニンのドライな温もり
フィニッシュは非常に長く、心地よい温もりを伴います。口の中にピートスモークと、それに付随するドライな木の渋み（タンニン）やスパイスが持続します。ノーマル缶の軽やかなキレと比べ、最後に微かなカカオやエスプレッソのようなほろ苦さが締める、骨太な余韻です。
総評：ノーマル缶は「爽快」、本製品は「濃厚」
ノーマル缶は、三郎丸蒸留所のピート香を爽快かつクリアに楽しむための入門編として優れています。一方、このスパニッシュオークフィニッシュは、ウイスキーとしての濃密な個性を最大限に楽しむことを目的に作られており、食中酒や、ウイスキーの奥深さを求める上級者にとって非常に満足度の高い一本です。
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