スコットランド、アイラ島のモルトウイスキーの代名詞とも言えるのが「ラフロイグ 10年」です。その個性が極めて強いため、世界中で「最も好き嫌いが分かれるウイスキー」として知られています。初心者には衝撃的かもしれませんが、この「消毒液」「正露丸」「磯の香り」と形容される強烈なスモークの奥にこそ、熱狂的なファンを魅了する奥深い甘みと複雑な潮の風味が隠されています。本記事では、その挑戦的な魅力に迫ります。
ラフロイグの個性:強烈なピートとヨードの秘密
ラフロイグの強烈なフレーバーは、主に以下の二つの要素によって生み出されます。
- ピート(泥炭)の濃度:大麦麦芽を乾燥させる際に、アイラ島の濃厚なピートを非常に強く焚き込みます。このピートには海藻やヨードを多く含んでいるため、薬品臭や磯の香りの元となります。
- 熟成環境:蒸溜所が海辺に位置するため、貯蔵庫の樽は常に潮風にさらされています。これにより、ウイスキーに塩気(ソルト)と海藻(シーウィード)のニュアンスが深く染み込みます。
この強烈なスモークと潮の塩気こそが、他の追随を許さないラフロイグ 10年のアイデンティティです。
テイスティングノート:甘さとスモークが激しくぶつかり合う
色(Color):輝きのあるゴールド
明るくクリアなゴールド。熟成期間は10年ですが、その強烈な風味は色からは想像できません。
香り(Aroma):衝撃的なヨードと潮の香り
グラスを近づけると、まず消毒液や磯の海藻、そして燃え盛るピートの煙のような香りが爆発します。このインパクトの奥には、シェリー樽由来の柑橘系(レモン)の爽やかさや、バニラのようなクリーミーな甘さが隠れており、強さの中にも複雑な奥行きを感じさせます。
味わい(Taste):力強いスモークと優しい甘さの二重奏
口に含むと、舌の全体に温かい煙と刺激的なスモーキーさが一気に広がります。このドライで辛口の風味の直後から、メープルシロップ、トフィーのような濃厚な甘みと、ナッツの香ばしさが現れます。潮の塩気が甘さを引き立てるため、強烈ながらも病みつきになるようなバランスを持っています。
余韻(Finish):非常に長く続くピートの残響
余韻は長く、熱く続きます。焦げた木のようなドライなスモークと、ヨードの苦味、そして潮風の塩気が口の中に留まります。この長く尾を引く残響こそが、ラフロイグ 10年がアイラモルトの王道と呼ばれる所以です。
おすすめの楽しみ方
ラフロイグ 10年を味わう際は、まずストレートでその強烈な個性を受け止めてみてください。その後、少量の水(トワイスアップ)を加えることで、潜んでいた甘さやフルーツの香りが開花します。また、強めの個性を生かしたハイボールも人気で、食中酒としても楽しめます。

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