ブレンデッドスコッチウイスキー グランツ トリプルウッドは、世界的なモルトウイスキーの巨人であるグレンフィディック蒸溜所を所有するウィリアム・グラント&サンズ社のフラッグシップブランドです。その歴史は1887年、創業者ウィリアム・グラントがウイスキー造りを始めた時代に遡ります。現在もグラント家によって独立経営が続けられており、ブレンデッドスコッチウイスキーの中でも特に長い歴史を誇ります。
「トリプルウッド(Triple Wood)」という名の通り、このウイスキーは異なる3種類の樽で熟成された原酒をブレンドすることで、複雑さとバランスの良さを実現しています。コアとなるのは、軽快でフルーティーな同社所有のグレーンウイスキーと、シングルモルト(主にグレンフィディックやバルヴェニー)です。このボトルは、日常的に楽しめる親しみやすい価格帯でありながら、3種類の樽由来の多層的な風味を持つ、ブレンデッドウイスキーの傑作として世界中で愛されています。
製法の深掘り:3つの樽が織りなす多層的な風味
グランツ トリプルウッドの最大の特長は、その「トリプルウッド」と名付けられたユニークな熟成方法にあります。ウイスキーを構成するモルトとグレーンの原酒が、ブレンドされる前に以下の3種類の樽で熟成されます。
- 1. ヴァージンオーク樽(新樽):これまでにウイスキーの熟成に使用されていない、新しいオーク材の樽です。この新樽から抽出される強い成分が、ウイスキーにスパイシーさ、バニラの風味、そして生き生きとした活発なキャラクターを与えます。
- 2. アメリカンオーク樽(バーボン樽):多くのウイスキーの熟成に使用される、使い終わったバーボンウイスキーの樽です。この樽は、ウイスキーに甘さ、トフィー、キャラメル、そしてココナッツのようなバニラ由来の風味を穏やかに付与し、滑らかな口当たりを作り出します。
- 3. リフィルバーボン樽(再使用樽):2回目以降の使用となる、再び詰め直されたバーボン樽です。すでに香味が落ち着いており、ウイスキーのキャラクターを過度に支配することなく、モルトとグレーンの持つ繊細なフルーツや穀物の風味をじっくりと育みます。
この三種の樽を巧みに組み合わせることで、若々しい活発さ、滑らかな甘さ、そして繊細な香りのすべてをバランス良く表現することに成功しています。
感覚分析:滑らかな甘さと、ほのかなスパイスの調和
色(Color):明るく、鮮やかな黄金色
明るく、鮮やかな黄金色。若々しさと共に、活発な樽熟成の要素を示唆する色合いです。
香り(Aroma):バニラの甘さと軽快なフルーティーさ
ノーズは非常に開いていて親しみやすい。最初に、アメリカンオーク樽由来のバニラやトフィーの甘さが優しく立ち上がります。その後、洋梨、青リンゴを思わせる軽快なフルーティーさと、わずかなモルトの香ばしさが追いかけます。全体としてクリーンで、ツンとする刺激は控えめです。
味わい(Taste):スムーズな口当たりとスパイシーなアクセント
口に含むと、その非常にスムーズで滑らかな口当たりに驚かされます。味わいの中心は、蜂蜜、キャラメルのような優しい甘さが主体。ヴァージンオーク樽の影響で、中盤から微かなシナモンやクローブのようなスパイスが舌を刺激し、複雑さを加えます。グレーンウイスキー由来のクリーンな穀物感が全体を支えており、バランスが非常に良いです。
余韻(Finish):中程度で、バニラとスパイスの温かい余韻
フィニッシュは中程度で、スムーズ。甘さが支配することなく、樽由来のバニラの甘い香りと、スパイスの温かい余韻が穏やかに続きます。非常にクリーンでドライな終わり方であり、飲み飽きない設計です。
最適な楽しみ方:多様性を持つ万能選手
グランツ トリプルウッドは、その高いバランスと親しみやすい風味から、どのような飲み方にも適応する**万能なブレンデッドウイスキー**です。
- ハイボール推奨: そのクリーンな酒質とほのかな甘さを活かし、ハイボールで飲むと、爽快感と味わいのバランスが最高の食中酒となります。レモンを軽く搾ると、フルーティーさが際立ちます。
- ストレート・ロック: 樽由来の複雑な風味をじっくり楽しみたい場合は、ロックまたはストレートで。冷やすことで甘さが引き締まり、滑らかさが強調されます。
- カクテルベース: ヴァニラとスパイスの香りが強すぎず弱すぎないため、マンハッタンやウイスキーサワーなどのカクテルベースとしても非常に優秀です。
総評: グランツ トリプルウッドは、価格以上の複雑さと品質を持つ、ブレンデッドウイスキーの傑作です。3つの樽がもたらす多層的な風味は、ウイスキー初心者から愛好家まで、すべての人に満足感を提供するでしょう。

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