スコットランド、アイラ島のボウモア蒸溜所で造られる「ボウモア 12年」は、その優雅で複雑なバランスから「アイラの淑女(Lady of Islay)」と称されます。その優美さから「アイラの女王」という通称で親しまれることもあります。ラフロイグやアードベッグのような強烈なピート香ではなく、海岸の潮の香りと甘いフルーツの風味が調和した、アイラモルトの入門編としても最適な一本です。ボウモアは、アイラ島最古の蒸溜所の歴史と、島独特の風土を体現しています。
ボウモアの個性:潮風が運ぶ穏やかなスモークと甘さ
ボウモア 12年が持つ独特の穏やかで複雑なフレーバーは、以下の要素から生まれます。
- 伝統的なフロアモルティング:今なお自前で大麦麦芽の一部を製麦しており、ボウモア湾の湿った空気を含んだピートスモークが特徴です。スモーキーさはありますが、荒々しさは控えめです。
- 熟成庫:蒸溜所の熟成庫は海面下に位置しており、樽が常に潮の香りと冷たい空気に包まれています。これにより、ボウモア特有のソルティ(塩気のある)なニュアンスが加わります。
- 樽構成:主にバーボン樽とシェリー樽をバランスよく使用することで、バニラの甘さとダークフルーツのコクが両立しています。
この潮風、穏やかなスモーク、そしてシェリー樽の甘さが三位一体となり、ボウモア 12年の絶妙なバランスを完成させています。
テイスティングノート:潮と蜂蜜の甘美なコントラスト
色(Color):温かみのある琥珀色
濃すぎず、温かみのある深い琥珀色。シェリー樽の影響を感じさせる、落ち着いた色合いです。
香り(Aroma):潮風とスミレ、そして蜂蜜
香りは非常に繊細で、まず潮の塩気と、湿った石や海藻を思わせる優しいスモークが感じられます。その後に、花の香り(スミレやアイリス)や、蜂蜜、レモンピールのような柑橘系の爽やかな甘みが追ってきます。スモークと甘さのバランスが優れており、飽きさせない複雑さを持っています。
味わい(Taste):チョコレートとピートの優雅な競演
口当たりはスムーズで心地よい。舌の上でダークチョコレートやトフィーのような深い甘さが広がり、すぐに穏やかなピートスモークが包み込みます。このスモークは主張しすぎず、甘さを引き立てる役割を果たしています。フィニッシュにかけてほのかなスパイスと柑橘の酸味が感じられ、優雅でキレの良い味わいです。
余韻(Finish):心地よい暖かさと海辺の残響
余韻は中程度からやや長く、口の中に暖かさが残ります。最後まで潮の塩気とスモーキーさが消えずに持続し、カカオやナッツの香ばしさとともに穏やかにフェードアウトしていきます。飲み終わった後も心地よい余韻が続くのが特徴です。
おすすめの楽しみ方
ボウモア 12年は、そのバランスの良さからストレートやロックでゆっくりと味わうのが最適です。特にストレートで飲むと、潮の塩気とシェリーの甘さの絶妙なコントラストを最大限に楽しめます。ウイスキーを飲み慣れていない方にも、アイラモルトの魅力を伝えるのに最適な一本です。

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